四国から九州へ


8月 平家の落人伝説の残る秘境 祖谷の里集落に来てから2週間になる。
北帰行は小学校に置かせてもらっている。
ここにはV字谷の山あいの里で、急な斜面にへばりつくように民家が点々とある。
よくもあんな所にと思うような高い所にも家がある。

先生に聞いてみると一番高い所にある生徒は帰るのに1時間半もかかるそうだ。
今日はお盆の14日。今谷あいの里では「阿波踊り」が始まっている。
見ているとひとりのおばさんが感心する程うまく踊っている。

たまにスカートをパッとまくりあげるので周りは大爆笑。
聞けばこの落合の派出所の奥さんだそうだ。
なんとものどかに平和な夜がふけてゆく。

 

※祖谷弁
本当に暑い→まっこと暑いぜよ
疲れてしんどい→せこうてせこうて
おじいさん→じいやん
おばあさん→ばあやん

 

10月12日 四国をめぐり三崎よりフェリーで佐賀関へ入港。いよいよ九州へ。
やけに冷え込みのきつい朝テントを開けてみると由布岳がそびえている。
今俺は山なみハイウェーの真っ只中にいる。
旅も長くなり感激もややうすれがちになっていたが、

今日は心にひびく事があった。
牧ノ戸峠で阿蘇を眺めていると、ガヤガヤと若い女の娘達がやってきて

俺のうしろで叫んだ。
「ワァー 綺麗かぁー!!」
その九州弁は実に新鮮だった。
あぁー 九州にやって来たんだ!!今阿蘇にいるんだと。
ウサギのピョン子に出会ったのもここだ。
大観峰で知り合ったH君が今夜はこれを食べようとぶらさげて来たのを

もらいうけ一緒に旅をすることになったのだ。
このピョン子はそれから沖縄~九州~山陰と寝ぐらを共にして

帰路故郷福知山で別れるまで10ヶ月共に暮らした。

 

12月に入り九州もめっきり寒くなってきた。
今 福岡を過ぎてひたすら鹿児島に向っている。
途中だが、ニュースでは阿蘇は10cmの積雪との事。
それでもこれからやってくる冬は楽しみだ!!
北帰行は今沖縄に向っている!!
暖かい南の島へ!!
あの弘前・松本のように長い春を待たなくてもいいのだ。
頬に当たる風も暖かくなる頃 やがて桜島の噴煙が見えてきた。

 

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