旅のわけ

 

高校を卒業して京都の会社に勤めていた俺は、その秋に初めて上高地へ行った。

今だかつて経験しなかった圧倒的な美しさ、空気感。

その新鮮な印象は忘れられないものとなった。

 

その後、退社して大阪の写真学校に入学。

アルバイトに追われながらもひたすら写真をとった2年間。

いまや卒業も間近になっている。

 

書を捨て、街を出て、野に出よう。まだ見ぬ素晴らしい日本の風景がある。

何人をも感動させる写真集を作ろう。最後には東京で個展を開くのだ。

こうして旅は始まった。耕運機を使ったのはゆっくり廻りたかったからだ。

名前は北帰行(ほっきこう)とした。

当初は、信州、東北、北海道の予定であったが、

弘前で絵を描き始め南下するうちに、とうとう沖縄まで足を伸ばすこととなった。

22歳で旅に出て、帰ってきたのは26歳。延べ3年6ヵ月の旅であった。

金はなかったが、時間だけは充分あったので、

感動的な風景を心ゆくまで見ることが出来た。

 

この旅では実に様々な体験をした。

気持ちよく泊めてくれた人達、食料を差し入れてくれた人達、

各地の人々の温かい人情には深く感謝している。

そして、日本の四季の美しさは、朝焼けに始まり落日に終わる1日。

流れる雲、潮風の匂い、新雪に輝くアルプスの山々などなど。

心に感じることが出来た。

 

ありがとう北帰行

ありがとう めぐりあいの人々よ

そして ありがとう俺の青春

 

            北帰行航海記TOP        次へ